「雪国ってさ…あいつを連想して頼んだのかと思った…。」
「……意図が見えない。それに冬真を連想するなら赤だと思うけど。」
「まァ…そうだが、ほら、名前的に。」
ああ、成る程。
八代は、自分と冬真が何か特別な関係にあるのでは無いかと聞きたかったのだろう。
実際には三年前の事があるので特別な関係と言えば特別な関係だが、きっと八代の考えているような関係では無い。
ならば、一言で片付けて早く帰ろう。きっと皐月は帰りが遅い事に不貞腐れている筈だ。
「あたしと冬真は、別に恋人とかそんなんじゃ無い。」
「!!…、おい、俺は別にそれが聞きたかった訳じゃねェからな。変な勘違いすんなよ。」
「はいはい、とにかく一杯飲んだんだから早く帰るわよ。」
店を出る前に手洗いを確認する為立ち上がり、八代にも男性用を調べるようにと指示を出す。
互いに短時間でチェックし終わると、彼女は八代に会計を押し付けさっさと店を出て行ってしまった。
外に出た浩子はゆっくりと駅の方へ歩を進める。
当然だが、外は暗い。
――七時過ぎか…。
そんなに話し込んだ覚えは無いのだが、クラクラする頭では何も考えたく無かった。せめて事務所に戻るまではボーッとしていたい。
駅はすぐ側。この時間では、サラリーマンや学生達の帰宅ラッシュに巻き込まれるのを覚悟で乗車するしかないだろう。押し潰されなければ問題無い。
「待てよ糞社長!」
――誰だ?…ああ、八代か。あいつ車はどうしたんだろ。
何か隣でごちゃごちゃ言われている。
話はもう聞いてやったんだ。今は頭が回らないし非常に面倒臭い。
「煩い黙れ死ねボンクラ減給。」
棒読みでパッと浮かんだ言葉を言えば、隣はボソボソと何か言った後口を開かなくなった。否、浩子がチラつかせた銃によって開けなくなったのだ。
――ったく、何処に隠してやがった。せっかく持って来てやったのに、コイツのスーツ置いてくれば良かったぜ。
駅の改札口で切符を買い、二人共久しぶりに電車へ乗る。
丁度電車が来たのは良いが、案の定帰宅ラッシュの真っ盛り。
座席等空いている筈も無く、立った状態で隣の駅に着くまで我慢するしか無い。僅か数分の我慢だ、どうと言う事は無いだろう。
