株式会社「C8」





「もう一つ、聞きたい事あんだけど。」


「…何?あたしは帰りの運転を誰がするのか聞きたいけどね。」


「……あ。」



まぁ、飲んでしまっている自分も自分なのだが、警察にお世話になる事だけは避けなければならない身分。

今まで数えきれない程の犯罪を犯して来たが、仕事は仕事。プライベートはプライベートで今は一般人な訳だ。

案の定、隣でグラスを手にしている男もしまったと言う顔で固まっている。



「……減給。」


「いやいや、同罪だろ。」



仕方がない。時間は遅くないし電車もバスもある…徒歩で帰らなければならない訳では無い。ここは久しぶりに交通機関を利用するとして、気まぐれに八代の聞きたい事とやらを聞いてやろうじゃないか。

半ば開き直ってカクテルを飲み干した。

少し頭がクラクラするがまだ大丈夫。呂律は回る。



「……で、何?」


「あ~、あのオッサンの事。」



「オッサン」と言う単語が誰を指している物なのかは分かるが、本人が聞いたら烈火の如く怒るだろう。

彼は普段から自分の年齢について酷く気にしている。歳は知らないが、あの奇抜な髪は若作りの一つだと思う。



「冬真が何?」


「あいつはお前の何なの?」


「……兄の親友、仕事上の部下。」



八代の質問の意図が分からないまま素直に答えたものの、今の答えでは彼は納得しなかったようだ。怪訝な顔をしてこちらを見ている。

では、何と答えれば彼にとっての模範回答になったのだろうか?

まさか、三年前の真実を知る者同士です、とは言えない。

昨日の事だからこのタイミングで聞いているのだろうが、この話に重要性が有るとは思えない為まともに答える必要は無い。



「……お前に説教すんのってオッサンくらいだろ。それに、お前の考えてる事分かってます、って素振りしてるしよォ。」


「何が言いたい?」


「自分でも分からん。」


「…は?」



グラスの底にあるチェリーを摘まもうとしていた手が止まる。

浩子はともかく、八代まで困ったように空になったグラスを眺めていたのだから呆れて物が言えない。

単純に疑問だけを口にしていたのか。

どうやらこれ以上話をしても意味が無いように思える。

浩子は深い溜め息を溢した。