犯罪者や不正入国者、表の人間ですら噂を聞き付けてやって来る。
今回の依頼主だって海外から来たマフィアの人間だった。どうやって空港の関門を潜り抜けて来たのやら…。
事情はともかく、「Help!」と怒鳴り込んで来たのは一週間前だったか。組織の口外許可を要請する電話がかかって来ていたので、男が来る事は分かっていたのだが…。
報酬額は三億。
身体中に転移していたガン細胞。男は既に自国の医者には余命を宣告されていた。相当無茶なオペだった筈だ。36時間もかかったと言うじゃないか。
無事に依頼を完遂した冬真は本当に奇跡の腕を持っていると思う。それが表の世界で発揮されない事が何と惜しい事。
「…お前、ゲームなんかやるのか?」
報告書に確認の印鑑を押していた所、冬真に声をかけられた。
ソファーに転がっているゲーム機を見てそう聞いたのだろう。それらは八代と皐月からの没収品だ。
別に浩子自身ゲームが嫌いな訳ではない。
忙しい毎日に、いつの間にか自宅の戸棚に放置してしまっている据え置きのゲーム機が脳裏に浮かぶ。
一時期、銃撃戦のゲームにハマっていたっけ。
「ゲームヲタク共から没収したのよ。」
「馬鹿だなあいつら。」
「…あ!そう言えば、あたしから没収した銃返しなさい。」
「はいはい。」
此方に放られた二丁の銃。
手入れの行き届いたそれは、室内の照明に反射して艶やかに輝く。人の命を奪う物が大切だなんて、普通ならどうかしていると思うだろう。
これも会社と同じ兄の形見。
と言うより、今は使いやすくて気に入っている。自分の身の丈に合うようになったのはつい最近だが…。
「ん?エアコン設置したのか?」
「…今更ね。ずっとガンガンに冷房効かしてるのに。」
「…確かに。」
チェックし終わった報告書をファイルに挟み、自身のデスクへしまう。
「…………。」
……する事が無くなってしまった。
盗聴は任せてしまっているし、溜まっている依頼の整理や振り分けも終わっている。
何をしようかと考えていると、突然浩子の携帯がけたたましく音を立てた。静かな室内には似つかわしくないハードロックな曲が着信音として鳴り響く。
その曲のチョイスに驚いた冬真は、何とも言えない顔で携帯の持ち主を見る。彼女の見た目的には、しっとりとしたバラードが合いそうなのに。
