株式会社「C8」






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「……八代を責めても意味が無いだろう?奴は何も知らないんだ。」


「確かにあたし達が話さないって決めた。だけど、何も知らないからこそ…偽善者みたいで腹が立ったの。」


「無茶苦茶だぞ、銃まで出しておいて…。少し頭を冷やせ!八代には俺から謝っておくから。」



八代は何も悪くない。悪いのは父親である信孝なのだ。

浩子自身も良く分かっていている事。

ただ、彼の発言や考え方が過去の悲劇を再び蘇らせるようで居たたまれないのだ。

八代は昔に比べると良い方向に変わった。その彼が慎也に重なってしまい、彼女を苛立たせているだけ。


――情けない。


苛立ちを押さえられない事もそうだが、彼の親を殺しておいて、それを本人に告げられずにいるのだから。

もう三年も経っているのに…



「八代を目の敵にするのは間違ってる…。それを態度に出すのはもっと駄目だ。」


「……分かってる。」


「それなら今は自分の仕事に専念しろ。何の依頼かは知らんが足元を掬われるぞ。」



そうだった。今は目の前の依頼を片付ける事に集中しなければ。

確か、黒野と立間が接触するに当たってその場所と時間を盗聴から…。



「…盗聴だろ?八代は帰したからな、俺がやる、詳しく話せ。」


「え、休まなくて良いの?依頼終わったばっかりなんでしょ?」


「このまま放っておけないだろ。…二時までなら付き合う。それと、二日は休暇をもらうぞ。今回のクライアントのオペが36時間も掛かってくたくたなんだ。」


「だったら尚更…」


「煩い。早く説明しろ…。じゃないと帰るぞ。」



冬真はあの頃と何も変わらないままで優しい。変わったのは浩子だけ。

この違いが何なのかは分からない。

単なる経験の差か、自分を許せる強さか。



「お前はまだまだ子供だよ。」


「……減給。」



冬真のデスクはこの三階にある。

皐月のノートパソコンを手に、自身のデスクの椅子へ座る冬真。

浩子は簡潔に目的を伝え、先程の録音した分と二時までのリアルタイムの盗聴を冬真に託した。

その間に浩子は冬真がデスクに置いた報告書に目を通す。


現代の日本では医者不足に加え、医者の労働時間が長く、彼等は馬車馬の如く働いている。それは裏社会でも同じ事で、冬真のような優秀な技術を持った闇医者には依頼が山のように来る。