人間は、死ぬ間際になるとそれまでの思い出が脳裏に蘇る、走馬灯現象が起こると言うが…どうやらそれはただの迷信らしい。
冬真の頭の中には、後悔と悔しさで溢れ返っていた。
浩子と八代をこの男から守る事は出来そうにない。慎也の事も、止められなかった。
一体、自分は何の為に生きていたのだろう?
結局、悪業に就き金を稼いでいただけ。医者の免許だって剥奪されてしまった。大学病院に勤めていた時は、「平成のブラックナントカ」と囃し立てられたが、あまり良い気はしなかった。そしていつの間にか先輩の医療ミスの尻拭いで病院を追い出されてしまっていた。あの時、本当の事を話せていればこんな所で死ぬような事は無かったのだろうか。
いや、それでは慎也と出会えなかった。
それなら、もうこれで良いじゃないか。親友と呼べる友と出会えたんだ。それで良い。
ん?これが走馬灯現象なのか?
まあ良い。
浩子、八代、すまない。
死を覚悟した冬真は静かに目を閉じた。
ドンッ!!
ドサッ……
『…………。』
足と腕の痛みが酷くて麻痺しているのだろうか?銃声がしたのにどこかを撃たれたような痛みは無い。
それに、何か倒れた音がしたような…。
恐る恐る目を開けると、視界の端に見慣れた姿があった。
『………………浩子…?』
銃を構えて立っている彼女。その銃口からは煙が出ている。
一体何が起きたと言うのだ。何故彼女が此処に?
八代と一緒に休暇を出した筈なのに。遊びに行ってたんじゃないのか?
否、今はそんな事どうでも良い。
戸羽信孝はどうなった?
『……くっ、…戸羽っ……?』
信孝は冬真の目の前で横たわる慎也のように、頭を撃ち抜かれて倒れていた。
呆然としている冬真に浩子が駆け寄る。
『……冬真、止血するね。』
『…浩子…何で……』
『最近冬真コソコソしてたから尾行してた。……翼がね、死ぬ前に教えてくれたの。慎兄はまだ生きてるって。』
『!?』
『……冬真は何も言ってくれないし、あたし一人で色々調べてた。あの遺体、ブレスレットが右腕にあったでしょ?でも、慎兄はいつも左腕にしてた。それでおかしいと思って……っ。』
『……。』
『まさか八代のお父さんと繋がりがあったとはね…!ほんと………っ、意味分かんないっ……』
