『ぐっ!!……がぁっ……っ。』
一発の銃声が響いた。
冬真は声を上げてその場にしゃがみ込む。慎也が撃った銃弾は、冬真の右足の太股に赤い鮮血を流させていた。
しかし、急所を外したと言う事は…
『……慎也っ……俺はお前の……っ…ツレだろ…っ…ぐっ…ああ"っ…』
『…だ、黙れっ……っ…クソっ!』
『……っ…元々が…人間不信だもんな…、疑心暗鬼になるのも分かる……っ…もっと早く…俺が、ぁあ"っ……お前の異変に気付けていたら……っ…くっ!』
『やめろ!…黙れって言ってる!』
恐らく、慎也は自分が利用されている事に気付いていたのだろう。
だがそれに気が付いた時にはもう、雅を騙し仲間を殺してしまっていた。
後戻りが出来なくなってしまったのだ。
『……お…俺、翼に会ったんだよ……。』
『……っ?』
『自分を死んだ事にして、三人殺した後…。偶然、路地裏のコインロッカーで翼に会ったんだ…。あいつ、スゲェ驚いてたけど…俺が生きてて喜んでた…事情も聞かないで泣いて喜んでたんだよ。…そんな奴が、スパイだなんて思えね-だろ!でも遅かった。俺は後戻りなんて出来なくて…翼と別れてすぐ雅に奴を殺させた……っ。』
『……やっぱ、八代の父親に……吹き込まれただけ…だったんだな…っ…』
冬真のスラックスにジワジワと染み渡る血が地面に滴る。滴り落ちた血の池が次第に大きくなっていった。
痛みに堪え、今にも泣き崩れそうな慎也に言葉を投げ掛けようとしたその時…
ドンッ!!
二度目の銃声が聞こえ、慎也が赤い鮮血を散らしながら宙を舞ってコンクリートの地面に倒れた。
『!!、………………慎…也?』
銃弾が頭を貫き、即死だった。
『全く、ペラペラ喋りやがって。これだから若僧はダメなんだ。とんだスクラップを駒にしちまったな。失敗失敗!』
倉庫の入り口付近から暗闇に響く声。
冬真にはそれが誰の物であるかは分かったのだが、目の前で息絶えている慎也の姿に、声の主に構う余裕など一欠片も無かった。
『…ぁああ……し、慎也っ……慎也ぁ!』
死んだ人間を蘇らせる事など神にだって出来やしない。闇医者である冬真も、そんなことは分かりきっている。
それなのに、撃たれた足を引きずって駆け寄り、泣きながら彼の心臓に意味の無い蘇生法を施す。
『あああああああっ!』
