株式会社「C8」





『ぐっ!!……がぁっ……っ。』



一発の銃声が響いた。

冬真は声を上げてその場にしゃがみ込む。慎也が撃った銃弾は、冬真の右足の太股に赤い鮮血を流させていた。

しかし、急所を外したと言う事は…



『……慎也っ……俺はお前の……っ…ツレだろ…っ…ぐっ…ああ"っ…』


『…だ、黙れっ……っ…クソっ!』


『……っ…元々が…人間不信だもんな…、疑心暗鬼になるのも分かる……っ…もっと早く…俺が、ぁあ"っ……お前の異変に気付けていたら……っ…くっ!』


『やめろ!…黙れって言ってる!』



恐らく、慎也は自分が利用されている事に気付いていたのだろう。

だがそれに気が付いた時にはもう、雅を騙し仲間を殺してしまっていた。

後戻りが出来なくなってしまったのだ。



『……お…俺、翼に会ったんだよ……。』


『……っ?』


『自分を死んだ事にして、三人殺した後…。偶然、路地裏のコインロッカーで翼に会ったんだ…。あいつ、スゲェ驚いてたけど…俺が生きてて喜んでた…事情も聞かないで泣いて喜んでたんだよ。…そんな奴が、スパイだなんて思えね-だろ!でも遅かった。俺は後戻りなんて出来なくて…翼と別れてすぐ雅に奴を殺させた……っ。』


『……やっぱ、八代の父親に……吹き込まれただけ…だったんだな…っ…』



冬真のスラックスにジワジワと染み渡る血が地面に滴る。滴り落ちた血の池が次第に大きくなっていった。

痛みに堪え、今にも泣き崩れそうな慎也に言葉を投げ掛けようとしたその時…


ドンッ!!


二度目の銃声が聞こえ、慎也が赤い鮮血を散らしながら宙を舞ってコンクリートの地面に倒れた。



『!!、………………慎…也?』



銃弾が頭を貫き、即死だった。



『全く、ペラペラ喋りやがって。これだから若僧はダメなんだ。とんだスクラップを駒にしちまったな。失敗失敗!』



倉庫の入り口付近から暗闇に響く声。

冬真にはそれが誰の物であるかは分かったのだが、目の前で息絶えている慎也の姿に、声の主に構う余裕など一欠片も無かった。



『…ぁああ……し、慎也っ……慎也ぁ!』



死んだ人間を蘇らせる事など神にだって出来やしない。闇医者である冬真も、そんなことは分かりきっている。

それなのに、撃たれた足を引きずって駆け寄り、泣きながら彼の心臓に意味の無い蘇生法を施す。



『あああああああっ!』