「あたしと八代の違いはコレ。」
こめかみに触れていた物がグッと押し付けられる。
「!!、…………お前っ…。」
浩子が八代に向けている物は、彼女が愛用しているシルバーの銃。
一瞬の出来事。それも何が起こったのか理解するのに数秒掛かった。
お互い相手がどんな表情でいるのかは見えないが、八代は仲間に銃を突き付けられているのだ。驚き、怒り、悲しみ…。どれを取っても穏やかな物では無い。
「…あたしは今此処ですぐにでもあんたを撃てる。……それが差。」
「……はっ、非情になれってかァ?」
「…いや、人の個性を潰す気は更々無い。ただ、あんた達がプロに成りきれないのはこれが理由よ。ぬるい仲間意識に中途半端な優しさ。」
「………。」
「そんな物は捨てろ。じゃなきゃこの世界ではやっていけない。あたしが皐月を気にかけてるのはまだ子供だからよ。仲間意識じゃ無いの。」
「……今日は偉く喋るじゃねーの。お前、結構しっかりした奴だと思ってたが可哀想な人間なのな。」
「可哀想」、八代自身も何故こんな事を口にしたのか分からなかった。ただ、「ぬるい仲間意識」等と言われる覚えは無い。
八代は七年前の開業当初から此処にいる。最初は確かにメンバー同士でぶつかりもしたが、今では皆の事を本当の家族のように思っている。社長が浩子の兄から、妹の彼女に変わってもその気持ちは変わらない。
何故浩子は仲間を簡単に切り捨てられるのだろう?三年前の「兄の死」が関係しているのか…。それとも、育って来た環境がそうさせているのか…。
どちらにせよ八代には分からなかった。
「可哀想…?」
彼女はその一言に一瞬の隙が出来た。
八代はそれを見逃さない。ソファーから背面でジャンプし、浩子の頭上を飛び越え背後を取る。左腕を彼女の首へ回し、右手で愛用している黒い銃、「H&K USP.45 エキスパート」を彼女の黒髪の上からこめかみへ突き付けた。
彼女が今持っている銃は「インフィニティ アクセレレータ」銃弾の数は八代の物と同じ。
八代には撃ち合うつもり等無い。だが、浩子は二丁拳銃。腰には「インフィニティ カウンターキラー」が忍ばせてある。本当に彼女が彼を撃てるなら背後を取られようが勝ち負けは既に決まっているような物。
格闘技は八代が上でも、銃の扱いは浩子の方が上。
しばらくの間、沈黙が続いた。
