株式会社「C8」





この日の夕方、路地裏の周辺では二重奏の断末魔の叫びが聞こえたそうだ。



「お、おっかねぇ……。」


「何が?」


「何でもね-よっ!」



いつもは図々しく休みを貰いたがる八代が、他人にそれを譲る等浩子には到底考えられなかった。そして帰るフリをしてドアの隙間から中を覗き、二人の企みを目の当たりにしたのだった。

浩子はすぐ様二人に鉄拳を喰らわし、ゲーム機の他に私物のパソコンまで取り上げられ嘆く皐月を無理矢理家に帰した。

結局、当初の予定通りに収まったようだ。

八代に盗聴器のチェックを押し付け、当の本人は呑気にテレビを見ている。

浩子が好むホラー特集が組まれた番組らしい。時折、それらしい効果音や人の叫び声が聞こえて来る。



――ぜってぇ嫌がらせだコイツ。



八代はそういった物の類いが苦手だ。「おっかない」とは、彼女の事でもありテレビの事でもあった。そして、それを知っているのはメンバーの中でも皐月と浩子だけ。

尊の依頼には護衛として何回か同行した事があるが、霊感の無い八代は直接「霊」を見たことが無い。だが、恐怖感はある。それこそ夜中に一人でトイレに行けなくなる程だ。

いつも自分が引き受けている依頼で感じる「恐怖」とは違う種類の「恐怖」。テレビから得た知識から良からぬ想像をしてしまい、余計に恐ろしく思ってしまうのだ。

それを振り払うように、目の前の事に集中しようとパソコンにコードを繋ぎ、ヘッドホンを装着した。



『だからあんたは使えないのよ!』



しかし、今のところヘッドホンから聞こえてくるのは、社内で立間が橘に漏らしている小言だけ。これはこれでイライラする。



「あ、水曜日がどうのこうのって言ってたっけか。」



ふと思い出した昼間の事。断るべきだが、どのように言い訳すべきか。プライドの高い相手はどんな一言で逆上するか分からない。

まだ夜も来ない。ゆっくり考えれば良いだろう。

ぼんやりとしたままスーツのポケットに手を入れるが、煙草を切らしたまま買うのを忘れていた。つくづくついていない。

取り上げられたゲーム機は浩子の膝上に置いてあるので手が出せない。八代はヘッドホンから聞こえる騒音に溜め息を漏らし、ただ過ぎて行く時間をもて余した。