立間と黒野が接触している間、八代と皐月は事務所で待機だ。盗聴しつつ黒野が組織であった場合にCHMへの潜入を懸念し、常に状況を把握していつでも動ける状態でいなければいけない。
「じゃあ木曜日、ガーデンホテルは八代が行って爆弾仕掛けてきて。」
「爆弾って…ただのギミックだろ。社長が言うとマジに聞こえんだけど…。」
「無駄口叩く暇があるなら早く見取り図覚えろ。」
パーティー当日の事は木曜日に再確認するとして、今日はもう盗聴器のチェックしかする事が無い。一人は帰宅させても良いだろう。
「皐月、今日はもう帰って良い。」
「え…、でも盗聴器の回線全部僕の私物のパソコンに繋ぎ直しちゃいましたよ?帰るならこれ持って帰りたいし…。」
「んじゃ、社長が帰って休めよ。俺は昨日早く上がらせてもらったしな。今日は泊まって明日朝こっからCHMに行くわ。ずっと休んでねーんだろ?」
時刻はまだ夕刻。浩子にとってはありがたい話だが、年下の皐月より早く帰るのはどうだろう?それは少し気が引ける。
「いや、やっぱり…。」
「はいはい、とりあえず社長はもう帰って良いから、シッシッ!」
「!!…………八代、減給。」
どうやら聞き入れる様子も無いようなのでここは彼等に甘える事にする。
冷房の効いた事務所から外に出るのは憂鬱だが、駐車場までの我慢だ。浩子は「お疲れ」と一言残し、外階段へと出て行った。
「「…………。」」
さて、ボスがいなくなった事務所。八代と皐月は顔を見合わせてニヤリと笑う。
「おい、持って来ただろーな?」
「勿論。でも盗聴器のチェックには差し支え無い程度にしなきゃいけないよ?」
「分かってるって!」
二人がパンツのポケットから取り出した物はゲーム機。
浩子を帰すのは二人の作戦だった。
以前、彼女がいる所でゲームをしていると当たり前だが没収されてしまった。それからというもの、彼等は浩子がいない時にこうして職場でもゲームを楽しんでいたのだ。
互いにゲーム機の電源を入れてスタートボタンを押すと、軽快なBGMが流れる。格闘ゲームらしいメニュー画面の「通信」を選択し盛り上がる二人。
「今日こそは俺が勝つぜ!」
「はいはい、負けないよ-。」
この時、はしゃぐ彼等は後ろに近付く影には気付かなかった。
「そういう事ね…」
