これは偶然では無く、表の人間の出来る事でも無い。全て黒野の仕業と考えて間違いないだろう。
そして、浩子や皐月のように外部で協力している人物がいるかもしれないのでまだ単独とは言い切れないが、黒野が短期就職と言う形で潜入していたであろう時期に同じように短期就職していた人物は誰も居ない為、全て単独で潜入していた事になる。
また、「C8」のような裏社会の人間なら此方の世界の人間は大抵把握している。しかし、黒野京介と言う名前は聞いた事が無かった。
浩子は出勤前に裏社会に詳しい人間に情報を求めたのだが何一つ彼の事は分からなかったのだ。となれば組織として動いている可能性は低くなる。
裏社会の企業や組織は全てその土地を仕切る者の所に名が上がり、自由に活動できるよう各団体にリストが回る。名が知られていないのならば、それは単独で動いている者か、新設したばかりの組織、あるいは裏社会の向こう側…闇で蠢く犯罪組織だけと言う事になる。
犯罪組織だとすれば、調べようが無い。裏社会での非公式組織。奴等は神出鬼没であり、予測不可能な存在だからだ。闇に埋もれ、光の届かない奥底に潜む影。最早その存在は都市伝説になりつつあった。
新設した組織のリストは定期的に更新されており、偶然にも更新日は四日前だった。もちろん確認したが、黒野の名前は無い。
単独か犯罪組織の人間か…。
彼の素性を知った所で何かある訳では無いが、此方も意地だ。目的が同じであれど、受けた依頼は完遂しなければならない。それを阻む相手の事は調べ尽くし、そしてねじ伏せる。
「……誕生日パーティーの日に持ち越せるかも。」
「単独の可能性が高くなりましたしね。」
「だが、犯罪組織の連中だったらどーしようもねーぞ。下手したら気付かれてこっちが潰される。」
「…でも、余計な死人は出したくない。八代、間違っても黒野は殺すな。目的は立間希美の暗殺なんだから。」
「大丈夫、血濡れは嫌だって。」
「とりあえず、あんたは当日のガーデンホテルのセキュリティと警備状況を頭に入れといて。皐月がここに全部書いてくれてるから。」
「了解。」
八代は浩子からガーデンホテルの見取り図を受け取った。当日の警備はやはり通常よりも少し厳しくなっている様で、会場の回りやホテル内は警備員の配置が予想以上に多い。
