株式会社「C8」





「………またですか?」



皐月の質問に頷く浩子。デスクから立ち上がり二人が占領していたソファーにどすんと音を立てて座った。

その様子から機嫌の悪さが十分に伺える。

彼女は数分前まで、八代の報告や黒野の事に関して頭をフル回転させていた。そこに煩い電話と来れば、機嫌が悪くなるのは当然の事で…。



「居場所教えちゃって…、神城さん怒るんじゃないですか?」


「言わないとあのジジィが煩いから仕方ない。尊があたしの番号を勝手に教えたのがいけないんだから。…減給!」


「朱冥さんが勝手に神城さんの携帯から盗み見ただけだと思いますけどね。」



人様の親の悪口を言いながら、彼女は自分の手にある資料を睨み付けた。それは、皐月に調べさせた黒野と彼が過去に勤めていた企業との関係性を調べた物。

皐月による調査の結果、驚くべき事実が浮かび上がった。

黒野が最初に勤めていた「松野セキュリティ」以外の全ての企業で、彼が短期就職していた時期に何らかのトラブルが起こっていたのだ。

埼玉の柳田工業では、その当時の次期社長候補が何者かに殺され未だ犯人は見つかっておらず事件は未解決のまま。

神奈川のFUJIWARA食品では、当時販売していた冷凍食品の一部に毒物が混入していたと日本中を騒がせ、営業停止に。

埼玉の松井クリニックでは、主に食中毒のウィルスとして知られている物が院内感染し、それによって点滴等の使い回しが発覚した。クリニックは営業停止、当時の医院長も解雇となった。

佐賀のスタジオNCBでは、経営は順調だったのにも関わらず、突如謎の倒産。当時の社員が会社の金を横領していた事が発覚している。

香川のOGWセキュリティでは、OGW本社から何者かが遠隔操作し、契約している会社や個人宅全てのセキュリティシステムへウィルスが流れ込むと言うウィルステロが起こった。これによってパニックが起こりOGWセキュリティは莫大な負債を抱えた。首謀者は不明。

そして都内の佐藤工業組合では、販売していた部品がリコールされ株が大暴落。


これらを調査して行って自ずと分かった事は、トラブルによって必ず得をする人物や他の企業があると言う事。

恐らく、得をした奴等は当時の黒野の雇い主。黒野も自分達と同じ様な仕事をしていると言う事。