株式会社「C8」





今朝の浩子からのメールには黒野京介に関するデータの他に続きがある。



『以上が黒野に関する報告。八代は今日のミッションを終えたら事務所にすぐ戻るように。あと、黒野は一ヶ月前から既に立間と接触している為彼女を殺す手筈は整っている可能性が高い。彼女から研究データを奴に渡すよう仕向けていた場合は、彼女のダミーのパソコンを用意して対応する。至急手配しておくように。…ひとまず実費で。』



八代が朝から機嫌が悪いのはこの為でもあった。最後の一文字、「実費で」というフレーズ。まあそれは後でちゃんと給料から出るのだが現在給料日前。彼女はそういった事を気にする事ができないのだろうかと苛立つのは今回だけでは無い。

と、前置きはそこまでにして。

浩子は今八代が立間から聞いた事に関しては予想していた…というかこうなる事の方が可能性としては高かった。

研究データは予定通り保護し、火曜日に彼女がCHMを出る時パソコンをすり替える。後は予定通り奴の動きを様子見すれば良い。



「…裕也君?」


「あ!…ああ、すみません。水曜日ですよね、考えておきます!」



既に弁当箱の中身は空になっていた。早い完食に八代が驚いていると、立間は「美味しかった!ごちそうさま。」と頬杖をついて微笑んだ。


今日、浩子と皐月は夕方に出勤だと聞いている。盗聴器の音声は全て録音されているので言わずとも大丈夫だ。

事務所に戻る前にダミーのパソコンを用意する必要がある。CHMの社員が使用しているパソコンは全て同じ。最新機能搭載の新型。


――ったく、昨夜は大変だったらしいし…これくらいしゃあねぇけど。


昨夜のハトヤマ潜入は少々ごたついたと、皐月から報告を受けている。何でも黒野本人が居たとか…。



「そんなスリルたまんねぇ-わ…」


「何?何て?」


「あ!いや、何でもないですよ!」



自然と漏れた独り言を、八代は慌てて誤魔化す。

まだ昼休憩は終わっていないが立間はこの後の会議の準備がある為、「先に戻る」と言ってテーブルから立ち上がった。特に残る理由も無い八代もそれに続き、二人は屋上庭園を後にした。