株式会社「C8」





資料室が綺麗に片付いた頃、時刻は昼を回ろうとしていた。時期に昼休憩を告げる社内チャイムが鳴るだろう。

日曜日という事で、社内は静かだ。普段なら誰も出勤しない休日。第一研究室は立間希美が学会の準備をしなければならないという理由で研究員が全員召集されている。

全員と言っても、十名。そして、彼女だけの手柄の為に彼等は会議に強制参加するのだ。橘も今月一杯は我慢するんだと、仕方なく会議に出席するようだ。

立間は自分のデスクでパソコンと向き合い慌ただしく学会の準備に追われている。他の研究員は、それぞれ自分の課題をしていた。



「桜井君、ラットの餌はコレとコレだから、一匹ずつの分量間違えないでね。」


「分かりました。」



橘にラットの餌が入っている袋を手渡されゲージの中を覗く。白い毛で覆われた三匹のラットがちょこちょこ動き回っていた。

可愛いと言えば可愛いが、実験の内容によってはその微々たる変化の為だけに生け贄にされる不運なペット。もしかしたら、現在も何らかの実験中で身体に何かのウィルスが仕込まれていたりするかもしれない。そう思うと余計に近寄りたくなくなる。


ゲージは三つ。どう手を付けようか迷っていると放送で社内チャイムが鳴り響いた。

今日は日曜日の為、どの社員食堂もやっていない。各自適当に昼食を済ませなければならなかった。



「裕也君、お昼一緒に外行かない?」



当然の如く立間から誘いの声が掛かる。しかし社内以外での接触は、黒野に顔を晒してしまう危険がある為控えろとの指示が出ている。

学会での発表原稿の進み具合や、その他彼女には聞きたい事もある。八代は不本意ながらも小さな手提げ鞄をぶら下げ、彼女に駆け寄った。



「希美さん、俺弁当作って来たんですよ!良かったら食べて下さい。」



一応、忠告をくれた橘には聞こえないように配慮しながら、それを立間の目の前に掲げる。



「えっ!裕也君が作ってくれたのっ?」


――昨日食ったコンビニ弁当の残りだぜ。


「はい、まあ美味いかは分かりませんけど一緒に食べましょ-よ!」


「弁当男子なのね~。どこで食べる?」



エレベーターと階段を使って屋上庭園に向かう。八代は残飯を食べる彼女を想像し、嫌みな笑みを浮かべた。