株式会社「C8」





そう思ったのに、すぐ隣で皐月は同じような事を指摘した。



「あ、この佐賀のスタジオNCBって倒産しましたよね。佐賀に親戚がいるんですけど、向こうでは随分大騒ぎになったみたいで…。」


「え?……いつ?」


「…確か……、あれ?黒野がここに勤めていたとされる時期と同じだったような気が…。」


「!!」



偶然では無いのか?

全て黒野が関係している……?



「皐月、今回の依頼とは関係無いけど出勤までに、黒野が今まで勤めていた会社で過去に何か事件が起きてないか調べて。」


「はい。」


――「黒野京介」、本当に何者なの…?



とにかく、彼が単独なのか組織で動いているのかは八代が上手くやれば時期に分かることだ。



「それより、黒野に会ったんですか?」



「会った」という表現はどうかと思うが、「あなたの顔を見られたのか」という質問ならば答えはNOだ。ブラウン管越しでは直接顔を会わせたが、向こうからは此方の顔なんて見える筈も無い。

そして、備品庫から脱出した時もギリギリで窓から飛び降りた為顔を見られた訳では無い。

黒野の顔は、社員リストに貼ってある証明写真と同一の物。あの狐目には嫌悪感しか沸かなかった。何と言うか、いかにも悪役の顔といった感じだ。

皐月は「あっちの顔は見たんですね?」と、興味津々な様子で尋ねて来る。

見たも何も、証明写真は手元にある。ブラウン管越しでは直接見たが…。

屋内の安全な場所でしか仕事をしない皐月は、こういった経験が無く珍しいのは分かる。だが、こうも質問攻めにされては煩いものだ。



「はいはい、とにかく報告は済んだんだから。撤収撤収-!」


「え~。」


「「え~」じゃ無い。送ったげるから、早くして。」



外に出ると結局夜明けだ。皐月はまだ17歳。組織で一番年下なだけに、過度に働かせてしまって申し訳ない。皐月の両親は他界しているが、もし生きていたなら顔向け出来そうにない。やらせている事は立派な犯罪だからだ。彼が望んで組織にいても、世間では通用しない。

皐月を自宅に送り届ける道中、浩子は「ごめん。」と小さく呟いた。