浩子が事務所に戻ったのは午前五時半。
ヘトヘトになった彼女を出迎えたのは、同じく眠そうに目を擦り疲れきった様子の皐月だった。
「お疲れ様です。浩子さん、無線切りましたよね、凄い心配したのに…。」
「あ、うん。報告終わったらとりあえず解散。夕方四時出勤ね。」
「……………。」
浩子はデジカメを取りだし、撮影した「黒野京介」の社員リストを確認する。それを自身のパソコンに送信し、拡大化。プリントアウトした物を自分と皐月へ。
「……黒野は一ヶ月前に入ったばかりですね。」
「警備員だったし、自分の出世の為に新薬のデータを狙っていた訳じゃないのか。」
「ほんと、警備員だったなんて拍子抜けですよ。」
「…埼玉のセキュリティ会社開発部に勤めていた経歴があるわね、だからハッキングの知識があったんだ…。」
黒野京介 32歳 独身
東京都世田谷区在住
埼玉南大経済学部情報科卒
埼玉県松野セキュリティ開発部
埼玉県柳田工業警備
神奈川県FUJIWARA食品販売部
埼玉県松井クリニック事務
佐賀県スタジオNCB
香川県OGWセキュリティ開発部
東京都佐藤工業組合製造
備考:短期勤務希望
「転々としてますね、恐らく世田谷区在住とは嘘でしょう。住所もデタラメです。」
「これだけ単身で各県飛び回れるって事は、組織的な行動とは考えにくくない?」
「いえ、どれも短期勤務ですから分かりませんよ。ですが、拠点は埼玉県でしょうね。出身大学や最初の勤務先が埼玉ですから。」
「………佐藤工業組合。」
この会社名には見覚えがある。都内の大企業で有名だが、確か半年前にリコールが起きて株が大暴落していた…。
「C8」も一応「株式会社」なので株式の情報は把握している。と言っても、裏社会の株式なので一般公開されることは無い。
そして、その「佐藤工業組合」の株が大暴落した時と「黒野京介」がこの会社へ短期就職していた時期が重なっている。
偶然…だろうか…。
いや、そんな事は立間希美暗殺と何の関係も無い。余計な事を考えるよりも今は依頼に集中しなければ…。
