はぁはぁと荒い息遣いが響く。
何故分かったのだろう?警備員の勘というやつだろうか?それとも、何かに気付いたのか?
一体何に?
「皐月っ……警備員、って…二人っ?」
『え?あ、はい。各警備室に一人ずつですっ!』
恐らく、その警備員とグルと言うことは無いだろう。黒野が画面の中から走り去った時、確かにあのブラウン管でもう一人の影を見た。が、それは十三階の人事部にいてサボっているのかタバコを吹かしていた。
『警備員に見付かったんですかっ?』
「…はぁ…はぁ、いや…っ…黒野。」
『はぁ!?』
「正面玄関フロア、で…鉢合わせかも…」
『いやいやいやいやっ!それって大ピンチじゃないですかっ!』
八代を帰すんじゃ無かったと心から思う。
奴は直感で、此方が新薬のデータを奪う計画の邪魔をしている人間だと気付いている筈。ならば、聞きたい事があるだろうし、もう一人の警備員はすぐに呼びはしない。
だが、浩子は体力を消耗していた。過労もある。いくら格闘技が得意でも、体力が無ければ威力も出ないだろう。奴は男、四階から全速力で駆け降りれば鉢合わせどころか、待ち伏せだって可能だ。
「皐月、他に出られる場所、は…無い?」
『……………次の角を右へ!奥に備品庫があります!その奥に窓がありますからそこから出て下さい!監視カメラはありません!』
指示通りに進むと、「備品庫」と書かれたプレートが見えた。施錠はされていない。扉を開けて中に入ると、中は広い図書館のような造りになっている。棚には備品が置かれ、奥には皐月の言葉通り、窓があった。
だが……。
「鉄格子っ……。」
『!?…他に窓はっ?二つある筈です。』
「………あった。けど一つは鉄格子、もう一つは…大丈夫だけど高い所にある。」
『登れますか?』
浩子の言う「高い所」とは、ほとんど天井の高さにある窓を指していた。しかしそれに届けば脱出は可能だ。
時刻は午前三時五十三分。
施錠確認と浩子を探す為に、黒野は確実に此方へ迫っていた。
『……踏み台や棚を利用して下さい。』
「……はぁ………はぁ、」
浩子は棚へ飛び乗る。人が乗ったことで、棚の軋む金属音が響いた。
