ハトヤマ本社はCHM同様に広い。それを駆け回れば流石の浩子でもやはり息は上がる。
自動販売機の上に設置してあるカメラも、シャッターの降りた売店の奥から目を光らせているカメラも、全て突破して行く。
最後の角を右に曲がると、暗い社内に唯一明かりの付いている警備室を発見した。
『そこです!警備室には監視カメラが一台窓口の上にありますっ。室内では無いので問題ありません。』
窓からそっと覗くと警備員は居ない。パソコンを乗せたデスクが三台と、監視カメラの映像が映されているブラウン管が沢山あった。
素早くドアを開け、中のデスクを調べる。
『急いで下さい。すぐに警備員が戻って来ますよ。』
一番右のデスクから、警備員リストが見付かった。ファイルを開いて一枚一枚チェックして行く。大手企業なだけに、警備員の数も多い。
パラパラパラパラ…
時刻は三時四十二分。
「あった、黒野京介っ!」
一番後ろの紙は、確かに探していた人物の物だった。拝借するつもりだったのだが、もしものことを考えデジカメでそれを撮影した。
ファイルを元に戻し、さっさと脱出する為に立ち上がる。
「…!?」
顔を上げた時、浩子は何かの視線を感じた。
どこから?警備員か?
それはすぐ近くからこちらを見られているような感覚。銃を握り締め、室内を見渡す。
「……!」
その視線の正体は室内にあった。
ブラウン管の一つから、社員リストにあった顔写真の顔がこちらを見ていたのだ。そう、彼が「黒野京介」。顔がアップで映されている。その表情は此方を睨んでいるような物だった。
狐目、左目の下にある傷。
そしてそれは一瞬、独特の狐目を見開いたかと思うとすぐに消えた。…否、走り去ったのだ。侵入者を捕らえる為に……。
「こっちに来るっ!」
『誰が!?』
―――ダッ!
浩子は再び走り出した。警備室から勢い良く飛び出す。
監視カメラの位置はもう頭の中にある為、勢いのままにかわしながら走り抜ける。
あのブラウン管には、マーカーで「四階·経理部」と書いてあった。警備員専用の階段で降りてくるよりも、通常階段から降りた方が浩子を捕らえるには早いだろう。となると、正面玄関の近くにそれはある。裏口と限りなく近い。
