ならば、彼は既に自分達が何者で、何名で動いているのかを知っていることになる。
上の階には社長室があるだけ。社長は有名な人物なので調べなくとも、彼が「黒野京介」で無い事くらい分かる。
『と…、とにかく一旦ハトヤマから出ましょう!そこにいても警備員に見付かりますっ。』
浩子は意気消沈した。だが、皐月の言う通りだ。仕方なく一階まで降りることに…。
エレベーターもエスカレーターも今は運転をストップしている為、上って来た時と同様に階段を使用する。警備員は専用の階段があるので、下りている時に鉢合わせる心配は無い。
『妙ですね…、彼は確かにハトヤマの社員なんですが。』
不本意だが、これはもう直接ハトヤマの社員に聞き込みをするしか無い。
一体、何がどうなっているのか……。
一階にたどり着いた時、浩子の腕時計の針は既に午前三時半を指していた。もうじき警備員も居なくなる。
正面玄関フロアの受付の裏を身体を横にして進み、裏口へと向かった。
その時、無線機の向こうの皐月はある事に気付いた。
『………あれ、』
「…………。」
『……74…kurono.kyouhei………74…。』
「……皐月?」
皐月はハトヤマ本社の見取り図を見ていた。それぞれの部所や部屋に番号が振ってある。
「黒野京介」のパソコンの専用コードには「74」の数字。最初は何も気に止めなかった物…。
もし、この数字が見取り図の部屋番号を示している物だとしたら…。
『74、…………………警備室っ!!』
「!?」
『浩子さんっ!警備室ですっ!急いで下さいっ!あと三十分しかありませんっ!』
「え?…ちょ、どういうっ…?」
『良いから急いで下さいっ!黒野は警備員ですっ!!』
「っ!!」
浩子はすぐさま正面玄関の方向へ走った。
ハトヤマの警備室は二つある。二つとも、一階にあるのだが「74」が指す警備室は浩子がいる地点から最も遠い位置にあった。
『右上!カメラっ!』
監視カメラを避けながら全速力で通路を駆け抜て行く。直線を突っ切り、左に曲がった。そのまま突き進んで突き当たりをまた左へ。
