株式会社「C8」





皐月の合図と同時に目の前のデスクの引き出しを漁る。一番下の引き出しにそれらしきファイルを発見し、「黒野京介」の名前が無いかチェックする。

パラパラと捲って行くが、その名前を見つけることは出来なかった。販売部の人間では無いようだ。

かかった時間は四十秒。監視カメラが作動してない内に入り口付近へ戻る。右上にある作動している方の監視カメラに気を付けながら販売部を出た。

ハトヤマ本社は警備員がいる間は各部署の点検の為に施錠はしない。警備員が帰宅する午前四時に全ての扉に施錠をするのだ。此方にとっては有難い事だった。

もと来た道を逆走し、企画部へ移動する。皐月の指示通りに動き、同じ要領で企画部の職員リストを確認するが、ここにも「黒野京介」の名前は無かった。

二階の探索はこれで終了。

その後も社員食堂や多目的ルームがある階以外の探索を行うが彼の社員リストは見付からなかった。

そして、残る部署は総務部、人事部、秘書室。総務部は十二階、人事部と秘書室は十三階にある。


浩子は十二階の総務部入り口付近で皐月の指示を待っていた。



『総務部は少しデスクの配置が疎らなので気を付けて下さい。カメラの位置は奥の天井の両端に一台ずつです。厄介ですね。』


「両方止められない?」


『片方しか無理です。とりあえず右側を止めますね。例の如く一分しかもたないので壁際を走り抜けてすぐにデスクを調べて下さい。』



浩子はギリギリでデスク内の社員リストを調べたが、ここにも該当する物は無かった。残るは上の階だけ。これなら最上階から調べて行けば良かったと、良くありそうな後悔をした。

階段を上った所で、警備員が通路を歩いているのに気付く。咄嗟に隠れ、その場をやり過ごしたものの心臓の音がやけに煩く響いた。



『秘書室には四名しかいません。人事部の可能性が高いです。』


「なら、人事部から先に行く。」


『了解です。右の通路を突き当たりまで進んで下さい。その際天井の左側に監視カメラがあるので屈んで突破を!』



社員リストを確認する為のペンライトを口にくわえ、銃を握り締める。恐らくは人事部に「黒野京介」の社員リストがある筈だ。はやる気持ちを抑え、今までよりも慎重に人事部へと歩を進めた。

月明かりしか無い社内。

夏場に冷房も効いていない空間となると流石に汗が吹き出し、肌に着衣を張り付かせ気持ちが悪い。