株式会社「C8」





そこで奴はどうにかして彼女から研究資料を奪おうと行動に出る。その動きから単独であるか組織で動いているのかを突き止めるという事だ。

もし複数の共犯者がいるなら、此方の存在を意識してその日の夜の内にCHMの社内へ潜入し、立間希美のパソコンから直接データを盗む筈。セキュリティの行き届いた社内に単独で潜入すると、いくらハッカーでも警備員に見付かった時に逃げられなくなる可能性が高い。

そして、単独であるなら立間希美本人に何とか言い訳をして、パソコンを持ってくるよう働きかけるしかない。



「とにかく、八代を待とう。」



奴はCHMのライバル企業に勤める人間。研究データを奪って、学会で発表する気なのか…。しかし七日後の学会は、学の話ではハトヤマ本社の参加は確認されていなかった。では、一体何の為に研究資料を?

どこか海外の企業にでも売り飛ばす気なのか?それなりの金額にはなるデータだから考えられない事も無いが…。あの研究データは確実にハトヤマの利益になる物…。



「………。」



浩子はソファーへごろりと横になった。

昨日からほとんど睡眠をとっていない。その為瞼が重い。また、先月から依頼が立て続けでろくに休んでいなかった。梅雨から立秋にかけては依頼が密集する。それは八名のメンバーも皆同じこと。八代と皐月も協力してくれているのに自分一人眠るわけにはいかない…と、頭では分かっているのだが人間睡魔には勝てないようで、気が付けば彼女からは穏やかな寝息が聞こえていた。



「あ-あ、寝ちゃったよ。」



タオルケットを彼女に掛け、皐月は浩子や八代が仕込んだ盗聴器から何か得られる物はないだろうかと、そちらの方に意識を集中させる。

「くろのきょうすけ」に関わる事、立間希美の回りを警備するSPの情報、それらは最重要情報だ…。八代と一緒にいる今、彼女の口から「くろのきょうすけ」に関する事が出るとは思えないが、盗聴しない訳にはいかない。



「……やっぱり、クーラーって良いな。」



それから皐月は、八代が事務所に戻るまで彼女の自宅、無人の第一研究室、彼女と八代のやり取りを盗聴し続けた。