パーティーの前日までには研究資料は仕上がっているだろう。計画を見直す必要がある。
「……浩子さんを待つしかないか。」
それにしても、奴のパソコンは使えなくなった筈。にも関わらずこうやってメールを送信出来ているのは何故だろうか。
考えられる事は、USBに皐月の捨てアドを保存し、本人のプライベート用のパソコン、又は携帯から送信したという事。しかし差出人の欄に表示される筈の奴のアドレスは当然不明。本人はハトヤマ本社にいるのだろうが、発信元の端末は探知不可能なように海外のサーバーをいくつも経由している。
要するに、こちらからメールを送信する事は出来ない。このメールは質問が目的なのでは無く、ただの脅しだろう。
『邪魔をするな』と。
それは此方の台詞だ。皐月はあまりイレギュラーには慣れていない。今まで彼に託されてきた依頼は全て完璧だったからだ。邪魔が入ろうがそれをイレギュラーと捉えるまでも無かった。
「…まだ依頼を受けた次の日だって言うのに、もうラスボス。」
「C8」は依頼を受ければ長期間の物で無い限り、大概一週間以内には完遂する。依頼主の要望次第で3日以内だとか、酷い時は明日までに等と無理な物もあるが完璧にこなしている。だが、そんなものは稀だ。今回のようにこうも早く行動に出ないといけなくなるようなパターンは完全に規格外。それに直面したことの無い皐月は頭を抱えた。
八代の仕事用の携帯に事態悪化の報告を入れ、橘から情報を聞き出したらなるべく早く事務所へ戻るようメールを送る。
一番親しく、兄のように思っている八代にはすぐにでも戻って貰いたいところだが、彼も彼でターゲットと接触中だ。
自分に出来そうな事は、計画通りに進んだ場合に備えて六日後に行われるパーティーの際の警備状況を全て把握する事。ホテル内と周辺の見取り図は既に浩子が入手している為、そこに警備状況を記入して行けば良い。
「ガーデンホテルの管理システムにハッキングしようか。」
パーティーまで一週間を切っている為、既にホテルの方では段取りが出来ている筈。有名なCHM本社社長の誕生日パーティー、大規模な物になることが予測されるので警備も普段よりは多少厳格になっているだろう。
ターゲットには当日もSPが付くことを忘れてはいけない。それを八代がうまくかわして、浩子が彼女を殺すまでエスコートしてもらわなければ。
