その後、八代は早めに仕事を切り上げた。あらかた研究室が片付き、橘の研究レポートの補佐も終え、四時半にはロッカールームで着替え終わっていた。
六時まで一時間半。
セキュリティシステムの把握をするには時間が足りない。とりあえず、浩子に報告とこの後の予定を伝えなければ。
「……………、っと。」
仕事用の携帯から報告内容をメールで送信する。それと同時に皐月へ無線機から声を掛けた。
『全部聞いてたよ。それと、仕込んだ盗聴器との回線もバッチリ。立間希美の自宅の盗聴器とも繋いでる。情報が入り次第伝えるから。』
「ああ、それから…」
『うん。外部操作した奴だよね?経由した海外のサーバーからユーザー名が見つかった。ローマ字で「kuro」。残念だけど発信元は特定できなかったよ…。』
「そうか…。」
『副室長…だっけ?彼から探るしかないよ。立間希美が付き合っている男性の中にいると思うんだ。』
「ああ、分かってる…。それと今夜零時、CHMの警備室に侵入する。社内のセキュリティシステムの把握がしたい。手伝えるか?」
『もちろん。連絡待ってるよ。』
皐月とのやり取りを終え、ロッカールームを出る。向かう場所は駐車場。浩子からも携帯に報告があった為、人目に付かない所で確認する必要があった。此処はいつ人が来るか分からない。
八代は急ぎ足でCHMのビルを出た。
愛車に乗り込むや否や携帯を開き、浩子からの報告を読む。
『ハッキングでトラブルがあったようね。減給!盗聴器の確認は此方で皐月とする。あのセキュリティ会社では社員が順番で休みを取る様で篠原は現在盆休みの為、立間希美の自宅に頻繁に出入りしている。彼女の自宅のパソコンからは外部操作されている痕跡が見付かった。何かのデータを抜き取ったと見られる。海外のサーバーを使ってハッキングをしていた。発信元は不明。ユーザー名は「kuro」と判明。六日後にはCHMの社長の誕生日パーティーが都内のガーデンホテルで開かれる模様。そこでターゲットを殺害する。よって、CHMのセキュリティの把握は無し。八代は引き続きターゲットとの接触を。此方はガーデンホテルの会場をチェックし、当日の警備内容を調査する。』
