一般人向けに開放しているカフェテリアが高いのは如何なものだろう…。確かにメニューには少し高めの値段のものばかりが並んでいる。最初に目に入った、サンドイッチが「2800円」なのには驚いた。素材が良いのかただのぼったくりなのか。
「お姉さんが奢ってあげるから好きなだけ食べて良いわよ。」
立間の一言が何故かしゃくに触ったが昨夜から缶コーヒー以外何も口にしていない為、ここはありがたくご馳走になる事にする。
「ありがとうございます、希美さん♪」
彼女は31歳。母性本能とやらを擽れば容易く攻略できる。目の前でギラギラ光る目を見つめてニッコリと彼女の名を呼んだ。
それに気を良くした彼女は下心をぶら下げた質問をしてくる。
「桜井君って、彼女とかいるの?」
「…しばらくいないんですよね。年上の女性が良いんですけど俺みたいな奥手のガキには難しいです、ははは。」
「ふぅん…。どういう人が好みなの?」
「色気あって、お金持ちで、肉食系女子ですかね。」
一応言っておくが、これはあくまでも依頼上の会話である。決して本音では無い。
「あら、そうなの…。ふふふ、私狙っちゃおうかなぁ~。」
「えっ!マジですか?うわぁ~俺、どうしよう。ドキドキします。」
――この糞豚、早く社長にぶっ殺されろ!
「可愛いわね、桜井君。下の名前は何て言うのかしら?」
「あ-…、裕也です。」
「じゃあ、裕也君って呼んでも良い?」
「もちろんです。」
会話も順調に進み、頼んだ物が運ばれてくる頃にはターゲットはすっかり八代に夢中になっていた。アドレスと番号を聞かれたので、仕事用の携帯の物を教えた。
食事中も頭を撫でて来たりだとか、スキンシップを取るようになった立間。八代は表面上では照れたように振る舞う。
計画通りと言えば、計画通りなのだが…。八代にとってはあまりよろしくない事態である。依頼だからと必死に耐えていると、耳に装着している無線機の向こうから微かな笑い声が聞こえた気がした。
