「おい、それじゃあ外部操作したのはその重役ってことじゃね-のか?」
『う-ん…』
八代の問いに無線機の向こうの声は微妙な反応をした。
カタカタカタ…
目の前の画面は赤い英字から緑色の数列へと変わっている。CHM専用の管理システムの中枢へと到達したのだ。素早く監視カメラの専用コードを探し出す。とても細かい数列が羅列しているので製造番号と照らし合わせるだけでも一疲労だ。
『それがそうでも無いみたいなんだよなぁ…。だからこうやって電波回路から痕跡辿って調べてるんだけど。いくつも海外のサーバーを経由してるみたいだからなかなかたどり着けないね。』
「……どうしてそいつじゃ無いと思う?」
『重役の名前は篠原って言うんだけど…。彼はセキュリティシステムの企画部部長。企画部だから管理システムに侵入してトラップを仕掛けられるような知識や技量は無いと思うんだよね。』
「…篠原が社内でそういうのに詳しい奴に頼み込んだっていう考えはどうだ?」
『それも…なんか違うと思う。自社の管理システムに侵入して外部操作なんかしたらすぐバレるし下手したらクビだよ。まぁ、八代達はターゲットを殺すだけだしあんまり関係無いと思うから気にしなくても良いよ。』
「バーカ!関係大アリだ。ターゲットの周りは徹底的に調べ上げる。殺しの邪魔になる者や、タイミング、色々気にしなきゃなんね-んだよっ!って社長が言ってた。」
何を他人の受け売りを自信満々と言っているのか、無線機の向こうでは苦笑いを漏らしていた。
と、そんな会話をしている内に八代は監視カメラの専用コードを発見した。それを無線機の向こうにいる彼に伝える。
『ご苦労様、じゃあ八代は自分の仕事を遂行して。僕はこのまま外部操作をした奴の特定を急ぐ。無線は繋げたままにしておくよ。僕に出来ることがあれば協力するから何でも言ってくれ。』
「ああ、頼む。」
カタカタカタ…
そして、八代はコード入力欄に先程確認した専用コードを打ち込む。後はEnterキーを押すだけだ。
八代は辺りを見回してパソコン片手に女性用ロッカールームの入り口に近付く。白衣のポケットに入っている盗聴器を確認し、タンッとキーを叩いた。
