株式会社「C8」







最早八代が対抗できるようなものでは無くなった。コード入力のスピードが上がっただけで無く、バリケードの性能まで上がっている。破壊コードが複雑化していた。

カタカタカタ…



「クッ……、一体どうしたら…っ。」



コード入力が間に合わない。一体誰がこんな仕掛けを…。

ジジッ…

焦りに焦っていると、突然耳に付けていた小型無線機が音を発した。メンバー全員が仕事中に装着している物だ。


――浩子か?今それどころじゃ…



『八代!八代っ!』


「!?……この声、眼鏡かっ?」



助かった。瞬時にそう思った。八代が「眼鏡」と呼んだ人物は昨夜電話で攻略法を尋ねた奴だったからだ。

何故このタイミングで…。そんなこと気にしている場合では無い。とにかくこの現状をどうにかしてもらわなければ。



「眼鏡!助けてくれっ!何かトラップが作動しやがった!入力が間に合わないっ!」


『ああ、どんな状況か説明してくれ!』



カタカタカタ…

八代は今の状況を説明した。説明しながらも目の前のトラップにギリギリの攻防を強いられる。気を抜けば終わりだ。



『マズイな、倍速トラップに強化システムか…。……仕方ない、僕が二重アクセスするから合図をしたら八代はコード入力だけに集中して。僕はバリケードの破壊と外部から手を付けた奴を特定する。』


「ああ、だが早くしろよ…」



カタカタカタ…
カタカタカタ…

気が付けばキーボードは汗まみれ。冷房の効いた社内なのに八代は運動をした後のように汗だくだった。

幸い、人の気配もまだ無い。元々九階は研究の為のフロア。作業に没頭している輩だらけなのがラッキーだ。

カタカタカタ…

無線機の向こうからもキーボードを叩く音が聞こえる。

そうしている内にも八代は追い込まれて行く。一回の打ちミスも命取りになる。彼はあまりのスリルに身震いした。



『…八代、お待たせ!行くよ?』


「流石、早いな。頼む。」



今の間に八代と同じ場所まで到達したと言う事に驚く。きっと彼がこの作業をしていればトラップ等に引っ掛かることも無かっただろうに。

八代は少し情けなく思った。