「精神的に不安定になっていたアリッサを、組織は見限って捨てました。その後アリッサはPMC…最近ではPMSCs(民間軍事警備会社)と呼ぶのですが…そこに拾われ、先程お話した中東の武装勢力の中核を担っています…政府軍に雇われ、反政府派の民間人を虐殺する、無法者のような仕事をしている」

男の言葉に、省吾は愕然とする。

近年改善はされつつあるものの、いまだPMSCsは警備を隠れ蓑にした直接戦闘行為に特化した戦闘集団、荒くれ者、無法者が集まる血に飢えた連中もいる。

そんな中に、省吾の助けたアリッサもいるという。

ショートカットの金髪、まだあどけなさの残る顔に、迷彩模様のメイクを施して密林の中を一人生き延びていたアリッサ。

そんな戦争とは無縁の生活をさせてやりたくて、省吾は彼女を助け出したというのに。

アリッサが戦争の後遺症で精神的に不安定なのを利用して、再び血腥い戦場へと駆り出した者がいる。

…省吾の拳が、自然と握り締められる。