蓮杖探偵事務所の仲間達が滑稽劇を繰り広げている頃。

耕介と省吾は、とある埠頭近くに車を停めていた。

依頼人が待ち合わせにこの場所を指定したのである。

普段ならば事務所か喫茶店で依頼の話をするのだが、こんな場所を指定する辺り、どうやら『普通の』依頼ではないようだ。

「…たまにゃあ楽な仕事をしたいもんだねぇ…盗聴器の発見とか、迷い猫探しとか」

助手席で耕介が伸びをする。

そんな軽口に付き合う事もなく、省吾は渋い顔のまま視線を走らせる。