「参った…」

薄暗いガレージの中。

スーツの上着を脱いでシャツの袖を捲った耕介は、頬の汗を拭う。

その拍子に顔に油汚れがついたが、彼は気付いていない。

それどころではなかった。

彼の目の前には、愛車。

名を、フィアット500という。

イタリアの自動車製造会社 フィアットが製造販売する小型自動車。

中でも耕介が乗っていたのは、1936年から1955年まで製造されていた初代500。

よく今まで走っていたと感心してしまうほどのレトロな車だった。