積荷。

省吾の口からその言葉が出た事で、耕介は後部座席のキャリーバッグに目をやる。

いまだくぐもった声のするバッグ。

『中身』が暴れているのか、時折バッグが小さく揺れる。

「本当に中身については聞かされていないのか」

「聞かされていないし聞きたくもない」

前方から視線を逸らす事なく、耕介の問いに答える省吾。

「聞けば必ず面倒なトラブルに巻き込まれる。あれは絶対に『ヤバイ荷物』だ。俺としてはさっさと届けて終わりにしたい」

確かに。

正常な人間の思考ならそうだろう。

だがこんな荷物の運び屋を請け負う辺り、そしてその運び屋の警護の依頼を受ける辺り、省吾も耕介も『正常な人間』ではなかった。