事務所のドアが開く。

「失礼、蓮杖探偵事務所ってのはここか?」

訊ねる男。

耕介と同じダークのスーツだが、皺一つ入っていない仕立てのいいスーツ。

「ああ…いい車乗ってるな」

耕介は座ったまま男を見た。

「以前は5シリーズに乗ってたんだがな…買い換えた」

「羽振りのいいこって」

耕介の言葉にも笑みすら浮かべず、男はソファに向かって歩いてくる。

「矢沢 省吾(やざわ しょうご)という。ここの探偵は腕利きと聞いてな…仕事を頼みたい」