「最近冴子の奴来ねぇじゃねぇか」

いつものように事務所の窓際の椅子に座っていた耕介が言う。

8月も盆を過ぎて折り返した。

相変わらず頻繁に蓮杖探偵事務所に遊びに来る俊平や雛罌粟と違い、冴子は顔を出さなくなった。

「冴子さんはウチの学校の生徒会長ですから…生徒会役員ってだけでも忙しいのに、生徒会長ともなると更に仕事が多いみたいで」

俊平が携帯ゲーム機の画面から目を離す事なく言う。

「だったら…石動君が聖園さんを手伝ってあげるとか…」

抑揚なく雛罌粟が呟くが。

「い、嫌だよ、僕の貴重な夏休みの時間が減るじゃないっ」

首を横に振って拒否する俊平。

こういう優しくない所が、冴子に彼氏として選ばれない理由の一つだったりするのだろうが。