『御覧頂けますでしょうか、走行中のトラックのコンテナの上に男性と女性が乗っています、これは…殴り合っているのでしょうか?走行中のトラック上で格闘しているようにも見えます。現在都内で起きている無差別爆破テロと何か関連があるのでしょうか』

雛罌粟の手の中のスマホのワンセグから聞こえるテレビ中継の音。

探偵事務所での留守番中、突如として聞こえた爆発音。

窓の外に見えた黒煙と炎。

何事かと思いテレビをつけた雛罌粟が見たのは、依頼者の女性と耕介がトラックのコンテナの上で殴り合う姿だった。

いても立ってもいられず、雛罌粟は事務所を走り出る。

(探偵さんの様子…おかしい…普通じゃない…)

自分に何ができる訳でもない。

だが、じっとしていられない。

ただ耕介のそばに行きたくて。

「うわっ!」

車道に思わず飛び出した雛罌粟は、金の瞳、長い金髪を後ろで括っているイギリス人男性の運転するバイクを急停車させる。

「お願いがあります…!」

「……!?」

そのイギリス人…レイノルドは雛罌粟の顔を見た。