でも車での通勤はあっという間に終わってしまった。
電車で二駅の距離も、車だとずっと近くて。
圭さんが大学構内の駐車スペースに車を止めてエンジンを切った時には、なんだかすごく残念な気持ちでいっぱいだった。


もう少し、圭さんが運転しているところを見ていたかったな。


なんて・・・我儘かな。


でも、ちゃんとそんな私の気持ちまで圭さんには伝わっていたのか、圭さんはハンドルから手を離すと、優しく微笑みながら私の髪を撫でた。


「今度のデートはドライブにしようね」


「はいっ」


そう言ってくれることが堪らなく嬉しくて、私は満面の笑顔で返事をした。


「それじゃあ、送って下さってありがとうございました」


お礼を言って車から降りようとした私を圭さんの腕が引き留めて。
どうしたんだろうと振り返った私の唇に圭さんは掠めるようなキスを落とした。


「仕事、頑張ってね。また今夜電話するから」


「はい・・・・・圭さんもお仕事頑張って下さい」


私は真っ赤に染まった顔を隠すように俯きながらそう言うと、慌てて車から降りた。
圭さんはそんな私を満足そうな笑顔で見つめて、車を出すのを待つ私に手を振った。
圭さんの乗る車が大学の構内から出ていくのを見送って、私は職場である図書館へ向かって歩き出した。


赤く染まった頬の熱がまだしっかりと残っていて。


私は恥ずかしような、嬉しいようなふわふわした気持ちで、大学の構内を歩いていた。