巡り愛



「・・・・・北野は何か悩み事があったみたいなんだ。本人に直接聞いたわけじゃないから、詳しいことはわからないけど・・・きっとそれを僕に話したかったんだと思う。でも僕が拒んだから・・・だから、今日、あんなことをしたんだ」


圭さんは私を見つめ返しながら、ゆっくりと息を吐き出した。
私は圭さんの言葉を聞きながら、あの時のことを思い返していた。


北野さんの必死な言葉や表情はそのせいだったのか。
どんな悩み事か、私には想像もできないけれど、そのせいで精神的に不安定で、圭さんに助けを求めていたのだろうか。


きっと、北野さんの言った言葉は彼女の本音だったと思う。
今でも圭さんのことが好きで、圭さんのことが忘れられないと言った彼女の言葉は・・・


「あの後、北野が倒れてしまって・・・・・」


「え・・・北野さん、倒れちゃったんですか?」


私はびっくりして、思わず訊き返してしまった。
まさかそんなことになっていたなんて、想像もしていなかった。


「うん、だからすぐにあいを追いかけられなかったんだ。本当はすぐに追いかけたかったのに・・・ごめんね・・・余計に不安にさせたよね?」


「だから、病院にいたんですか?」


「ああ。目の前で倒れた北野を放っておけなくて、病院に連れて行った。でも、そのせいでキミを不安にさせて、本当にごめん」


圭さんはそう言って、頭を下げた。
その表情が苦しげで、私は頭を振って応えた。


圭さんはお医者様だもの。
目の前で倒れた人を放っておけるはずがない。
私だって、逆の立場なら同じことをしたと思う。


だから、こんな風に自分を責めないでほしい。


「圭さん・・・そんなに苦しそうな顔、しないで。確かにあの時はびっくりしたし、圭さんが追いかけてきてくれなかったこととか、その後、連絡がこなかったこととか・・・不安でしたけど、でも、北野さんを放っておけなかった圭さんのこと、わかるから。だから・・・」


その先の私の言葉は、突然、抱き締められた圭さんの胸の中に消えた。


ぎゅっと強く抱き締められて、私は苦しいくらい切なくて。
それと同じくらい好きって気持ちが溢れた。