『あいっ!?』
コール音が途切れた瞬間、圭さんの切羽詰まったような声が私の名前を呼んだ。
普段は穏やかな声で私を呼ぶ圭さんが、こんな風に慌てた声と出すなんて。
その声が必死なものに聞こえて、私の心の中に切ない痛みが広がる。
『あい?』
黙ったまま、声を発しない私に圭さんが不安そうにもう一度、私の名前を呼ぶ。
―――…やっぱり私はこの人が好き。
声を聴いただけで。
名前を呼ばれるだけで、切なくて心から愛しいと思う。
「・・・け、いさん」
ずっと泣いていたせいか、やっと発した声は消えるように掠れてしまった。
『あい・・・・・ごめん』
それが何に対しての謝罪なのか、私は不安に押し潰されそうになって、止まった涙がまた滲んできた。
『あい、泣かないで。不安にさせてごめんね。でも、信じて。僕が好きなのはあいだけだよ』
「―――――っ」
圭さんの言葉に私は堪らず、携帯を持っていない方の手で口元を押さえた。
そうしないと大きな声で泣いてしまいそうだったから。
嬉しい・・・ただ、嬉しくて堪らなかった。
『あい・・・泣かないで。キミを抱き締めたくて堪らない』
圭さんが切なげに電話越しに呟く。
私も圭さんに抱き締めてもらいたい・・・・・
「圭さん・・・会いたい・・・」
消えるほどの小さな声でつい零してしまった本音。
言った後で、後悔した。
圭さんが今どこにいるのかも、どんな状況なのかもわからないのに。
ただの我儘だ。

