「そう言えばさ、お前、大学の図書館とか行く?」
「は?」
僕は内心ドキッとして僕の隣に座りこんだ矢野に視線を向けた。
“大学の図書館”に大いに反応してしまう。
矢野も同じ東都大の卒業生だから、大学の図書館にはなじみがあるだろうけど。
今、このタイミングで言われると、なぜか心にざわめきが生まれる。
こういう時の僕の感は不本意ながら外れない。
「この前、久々に行ったんだよ、図書館に。大学の時に読んだ本でまた必要なのが出てきてさ。そしたら、なんかめちゃくちゃ可愛い子が受付に座ってて。あの初々しさから言って、新人だな。ホント、すげぇ可愛いんだ」
「・・・・・・・・」
知ってるよ。
すごく可愛いことは。
そんなこと、お前が彼女を見つける何十年も前から知ってる!!
・・・って言いたい気持ちを抑えて、僕は興奮して一気に話す矢野に冷たい視線を向けた。
そんな風に彼女のことを可愛いなんて言ったって、譲ってやらないから。
まだ、矢野が言ってる女の子があいだと決まったわけでもないのに、僕は心の中で悪態をつきながら黙っていた。
でも、矢野が話している子があいだってことはたぶん間違いない。
だって、今年、あの図書館へ新しく入った司書は彼女だけだって、あい本人が言っていたから。
それに『めちゃくちゃ可愛い子』ってところも、絶対にそうだと僕に思わせた。
「なに?なんでお前、そんな怖い顔してるんだよ?」
矢野が興奮に任せてベラベラと話し続けていた言葉を止めて、訝しげに僕を見た。
怖い顔・・・そんなに顔に出てるかな?
あいが可愛いのも知ってるし。
僕だけじゃなくて、他の男もきっとそう思うってわかっているけど。
僕じゃない男からあいのことを『可愛い』とか聞くと、イライラとしてしまう。
・・・・・こんな感情、生まれて初めてだ。

