【side 圭】
今日も朝から外来は混雑していて。
お昼をだいぶ回ってから、ようやく一息を吐けた。
限られた自由時間。
僕は迷うことなく、病院を抜け出して道路を挟んだ向こうに足を向けていた。
大学時代、何度となく足を運んだその場所も卒業してから来るのは久しぶりだ。
医療関係の本が充実しているから、今でも利用している同僚もいるけれど。
今の僕には無縁の場所だった。
でも、彼女がいると思うとその場所はとても特別なところに思える。
どうか、そこにあいがいますように。
そう願いながら、僕は図書館の入り口のドアを開けた。
僕の願いどおり、入り口を入ってすぐ右奥の受付カウンターの中にあいは座っていた。
彼女を見つけた瞬間、嬉しくて勝手に顔に笑みが浮かぶ。
昨日出逢った時と同じように、あいは今日もとても可愛い。
俯いて何か考え事でもしているのか、手元の書類とにらめっこしている彼女に、そっと近づく。
びっくりするあいの顔が見たくて。
カウンターの前まで来た僕の耳にあいの大きな溜息が聞こえた。
「そんなに大きな溜息を吐いて、どうしたの?」
あいの笑顔が見たかったのに、大きな溜息・・・。
何か、心配事でもあるのだろうか?
「――――っ!」
急に声を掛けた僕にパッと顔を上げて、すごく驚いた顔をしているあい。
期待通りの反応だったのに、あいの溜息の原因が気になって、嬉しさも半減した。
それでもにっこりと笑って見つめる僕にあいは照れたのか、それとも溜息を聞かれたことが恥ずかしかったのか、すぐに俯いてしまう。
「心配事?」
僕は俯いたあいにできるだけ優しく声を掛けた。
その溜息の原因を聞かせて。
僕がキミの不安を取り除いてあげたい。
「大丈夫?僕でよかったら話して?」
願いを込めて言葉を重ねた。

