「午前の診察が長引いて、やっとお昼休憩を取れたから。あいに会いたくて来たんだ」
そう言って笑う顔は少し照れているのか、目元がほんのり赤い。
普段はとても大人っぽい圭さんだけど、こうして照れるところはすごく可愛い。
「・・・嬉しいです」
圭さんよりもずっと赤い顔をしているだろう私は、小さな声だったけれど、ちゃんと彼の瞳を見てそう言った。
私に会いたいから貴重なお昼休みに、わざわざ道路を挟んだ大学側まで足を運んでくれた圭さんがとても愛しいと思った。
「あい・・・可愛すぎ」
圭さんは火照る私の頬に指先を伸ばして、その体温を確かめるみたいに触れた。
ますます体温の上がる頬に困ったように眉を下げた私を愛しそうに見つめてくれる圭さんに、鼓動が大きく高鳴った。
「それからあと、これ。探してほしいんだけど、わかるかな?」
名残惜しむように離れていった圭さんの指先。
やっぱり私も離れていく圭さんの体温が寂しいと思った。
圭さんが胸ポケットから取り出したメモ用紙に視線を向けると、本のタイトルと著者の名前らしいメモ書きがしてあった。
タイトルからすると、医療関係の本なのかな。
「調べてみますね。ちょっと待って下さい」
私はそう言うと、目の前の図書検索用のパソコンにメモ書きされていたタイトルを入力する。
出てきた検索結果に目を走らせて、圭さんを見上げた。
「今、貸出中みたいですね。予約しておきますか?」
「そうなんだ・・・うん、お願いします」
私はそのまま予約用紙に必要なことを記入して、予約処理をした。
その間、圭さんはにこにこと機嫌よさそうな笑顔で私の手元を見ていた。
圭さんに見られていると思うと、なんだか恥ずかしくて。
ドキドキしながら、予約処理を済ませた。

