午前中と打って変わって、午後の仕事は何をしてもはかどらかなった。
心の中も頭の中も、占めているのはさっきの噂話で。
圭さんがモテるのは想像していたことだし、あの見かけだから当然のこと。
それは仕方がないにしても、圭さんの元カノのことを聞いてしまったのは、最悪だった。
出逢ってたった1日。
それでも自分で自覚するほど、圭さんに惹かれている。
だから、たとえすでに別れた人のことでも、聞くといい気持ちはしない。
・・・嫉妬してる。
自覚すると、そんな自分がすごく嫌になった。
圭さんは27歳。
あれだけの人だもの、お付き合いしてた人がいて当然。
さっきの人達みたいに、周りが放っておくはずがない。
きっと、恋愛経験は豊富だろう。
そういう私だって、数は少ないけれど、それなりに付き合った人はいる。
経験だって・・・人並みにある。
そんな自分を棚に上げて、それでも圭さんの元カノへ嫉妬してもやもやと気持ちを乱している自分が、本当に嫌だった。
しかも・・・相手の人は“超絶美人”だって。
「はぁぁぁ・・・」
誰もいない受付に座っている私は、大きな溜息を吐き出した。
「そんなに大きな溜息を吐いて、どうしたの?」
「――――っ!」
不意打ちに頭の上からかけられたその声に、私はびっくりして顔を上げた。
そこにはにっこりと微笑む圭さんがいて。
私は驚きで目を丸くして、顔を真っ赤にした。
誰にも聞かれないと思った盛大な溜息を、まさか圭さんに聞かれるなんて。
恥ずかしすぎて、顔を赤くしたまま、思わず俯いてしまう。
「心配事?」
俯いた私に圭さんが心配そうに訊いてくれる。
その優しい声のトーンに、心が甘く疼く。
(ああ・・・私、この人のことが好きなんだ)
改めて、自覚した。

