(圭先生・・・って圭さんのこと?)
私は表情を崩さないように意識しながら、ドキドキする心臓でつい聞き耳を立ててしまう。
『さぁ。院内での恋愛は面倒だから、誰のアプローチも受けないんじゃないの?』
(院内・・・病院内ってことだよね?
やっぱり圭さんのことなんだ)
どうして病院関係者が大学のカフェテリアで食事しているのか。
そんなことすら気にならないくらい、私は彼女たちの会話をじっと聞いていた。
『あんた、圭先生のこと狙ってるの?』
『ええー、そんなはっきり言われると照れるけど。だって圭先生ってかなりイケメンだし、すごく優しいし・・・素敵じゃん』
私の隣で赤くなっている女性の言葉に、心の中にじわりと嫌な痛みが溢れてきた。
(やっぱりモテるんだ・・・)
その女性の言葉通り、圭さんはすごくかっこいいし、内面の優しさが滲み出ているような雰囲気がある。
だからと言って、男らしさがないかと言えば、そうではない。
綺麗なくらいかっこいい容姿の中には、男の人らしいキリっとしたものをちゃんと感じさせる。
要するに、すごくかっこよくて男前なのだ。
しかも優しい。
たった1回しか会っていないのに、ここまで思う私はすでに重症なんだろう。
でもそれは間違った評価じゃないと、隣の会話を聞いていて確信した。
『しかも、仕事もできるし・・・まだ研修医明けて間もないのに、すでに名医だって言ってるおばあちゃんがいたよ』
(仕事もできるんだ・・・・・)
容姿端麗で性格よくて、仕事ができるって・・・完璧すぎだ。
そう思っていたら、隣の人も同じようなことを言って、『ほぅ・・・』と甘みを含んだ溜息を洩らした。

