巡り愛



***


圭さんと手を繋いで、病院内の食堂へ向かった。
恥ずかしいから手を離してほしいと言った私に、圭さんは「さっき僕に心配かけた罰」と言って手を離してくれなかった。


白衣を着た圭さんと手を繋ぐ私へ向けられる興味深そうな視線の雨。
中には私を睨むように見ている女性の看護師さんも結構いる。


どうしていいのかわからず俯き加減な私とは対照的に、圭さんはそんな視線をまったく気にすることなく私の手を握ったまま、堂々と食堂の中に入って行った。


好奇心と嫉妬と・・・色んな視線を浴びる私達へ思いがけない声がかかった。


「あ、圭。いたいた」


その声に顔を上げた私は、キリッと胸が痛んで思わず足を止めた。
私のそんな様子にすぐに気付いてくれた圭さんは、繋いでいた手を強く握って少しだけ私を自分の方へ引き寄せた。


「・・・なんで北野がここにいるの?」


「もう、そんなに警戒しないでよ。ただちょっと報告に来ただけだから」


冷たく訊いた圭さんに北野さんは苦笑いを浮かべて、肩をすくめた。
そして圭さんの隣りに隠れるようにして立っている私を見て、驚いたように瞬きをした。


「圭、もしかしてその人・・・」


「ああ、そうだよ。水瀬あいさん・・・僕がずっと探していた人」


はっきりと告げた圭さんに北野さんは一瞬だけ瞳に悲しそうな色を浮かべた。
でもすぐにとても綺麗に、にっこりと笑った。