巡り愛



「いや、あのね・・・違うの・・・お仕事仲間の人と話してるだけなのはわかってるんだけど・・・あの・・」


恥ずかしさのあまり焦る私は取り繕うように口を開いても、余計に空回りしてしまう。
そんな私を圭さんはまだ驚いた顔をして見つめていて。
挙動不審になってしまった私の目をじっと見つめた。


「ヤキモチ、妬いてくれたの?」


「ぇ・・・・・はい」


あんまりじっと、熱っぽい瞳で見つめられるから、私は恥ずかしくて仕方ないのに、素直に頷いてしまった。


「ひゃっ」


いきなりギュッと強く抱き締められて、びっくりして変な声を上げてしまう。
それでも圭さんは私を強く抱き締めたままで。


「嬉しい。嬉しすぎて今ここでキスしたい」


私の耳元に熱っぽく色香たっぷりに、そんな囁きを落とした。


「・・・・・・」


びっくりして固まる私を圭さんは愛しそうに見つめている。
私もここがどこだとか忘れて、うっとりと圭さんを見つめ返しながら、つい流されてしまいそうになっていると、後ろの方でドアの開く音が聞こえた。


私を抱き締めたままの圭さんが、隠れるように廊下の角を曲がる。


開いたドアから出てきた人の足音が遠ざかると、圭さんは腕の中にいる私に視線を落として、ふわりと綺麗に笑った。


「お腹空いたから、お昼一緒に食べに行こう」


さっきまでの不機嫌さなんて欠片も残っていないように、ご機嫌な様子で圭さんは私を笑顔で見つめている。


不機嫌な圭さんもかっこよかったけど、やっぱりこうして笑っていてくれるのが一番素敵。


なんてまたしてもドキドキしながら、私も圭さんの提案に笑顔で頷き返した。