「最近、多いんですよね。ああやって水瀬ちゃんを指名する男の子」


「はぁ?」


あい達の方を見ながら呟いた中野さんの言葉に、僕は思いの外、低い声を上げてしまった。


「水瀬ちゃん、元々可愛いし男子学生に気に入られてる感じでしたけど、桐生先生と婚約してからますます増えちゃって。水瀬ちゃん自身が前よりもずっと女っぽくなったって言うか、綺麗になったせいだと思うんですけど。確実に水瀬ちゃん狙いの男の子達増えてますよ」


「・・・・・何、それ」


聞き捨てならない中野さんの発言に僕は表情も、低くなった声も取り繕うことを忘れて、怪訝な顔をした。


「特にあの子、危険かも。ここ最近、ずっと通って来てますよ。そのたびに水瀬ちゃんに色々頼んで2人になる口実作ってるし」


「・・・・・・・・」


中野さんが投下した爆弾に、僕はこれ以上ないほどの不機嫌な顔であいとその危険人物を睨むように見ていた。



パソコンの画面を一緒に覗き込んで、言葉を交わす2人。


時々、その男に何かを言われて、あいが笑顔を見せる。



そんな些細なことが堪らなく僕を苛立たせた。


中野さんが言うように、あいの隣りであいを見つめる男は、確かにあいを特別な眼差しで見ている。



コイツ、あいに本気ってことなのか?



モヤモヤどころじゃ治まり切らず、キリキリと胸が痛み出す。



「あ・・・」


「あい!」


僕と同じものを見て、中野さんが小さく声を上げたのと同じ瞬間、僕は我慢できずにあいの名前を呼んでいた。




―――…あいの隣りの男が、あいの髪に触れた。