*side圭*



「あ、桐生先生。こんにちは」


午前の診察を終えて、お昼休みにあいの職場である大学の図書館を訪ねた僕を受付に座っていた中野さんが見つけて声を掛けてくれた。


「こんにちは。・・・あいは?」


中野さんに笑顔で挨拶を返して、ここへ来た目的であるあいの居場所を訊ねると中野さんはニヤッと口角を上げて受付のカウンターの向こうを指さした。


「あそこです。今、本を探している学生君に捕まってます」


中野さんの指さした方へ視線を向けると、検索用のパソコンの前に並ぶあいと男子学生がいて。
その光景に無意識に眉を寄せてしまう。



・・・・・距離、近すぎないか?



一つの画面を覗く2人の距離が今にも触れてしまいそうに近くて。
モヤモヤとした感情が心に沸いた。



「桐生先生、顔に出過ぎですよ」


「え?」


クスクスと可笑しそうに笑う中野さんを振り返ると、中野さんは意味ありげな笑みをさらに深めた。


「水瀬ちゃんが男の子と並んでるからってその顔は露骨過ぎます」


「・・・そんなにわかりやすい?」


「はい」


即答で頷く中野さんに僕は苦笑を返した。



でもやっぱり、目の前であいが他の男とあんなにくっついているのは面白くない。


面白くないどころか、イライラする。