翌朝、びっくりするような豪華な朝食を頂いた後、私は圭さんと一緒に旅館を後にした。


帰る間際、わざわざ圭さんのお父さんとお母さんが見送りに来てくれて。


「また来てね」


と満面の笑顔で言ってもらえたことが、なんだかとても嬉しかった。


「圭って頼りないところがあるけど、これからもお願いね」


お母さんがそう耳打ちしてきた言葉に、私は少し赤くなりながら頷いた。


「でも圭さん、頼りなくなんて全然ないですよ!すごく頼りになります」


小声だけど、私が力説するように答えるとお母さんは「そう?」と少し嬉しそうに笑っていた。




見送ってくれる圭さんのご両親に何度も頭を下げて車に乗り込む。
車の窓からもう一度、お礼を言うと圭さんはゆっくりと車を発進させた。


「圭さん、連れてきてくれて本当にありがとう。すごく楽しかった」


車に向かって手を振ってくれている圭さんのご両親の姿が見えなくなったところで、私は隣で運転してくれている圭さんに改めてお礼を言った。


「こっちこそありがとう。両親が色々煩くて迷惑かけちゃったけど、僕もあいと来れてよかったよ」


「迷惑だなんて・・・私、嬉しかったよ。圭さんのご両親がすごく温かくて、圭さんがどうしてこんなに優しくて素敵なのかわかった気がする」


「・・・・・そ、う?」


前を向いたまま運転する圭さんの横顔が赤いのは、気のせいじゃない。
照れてる圭さんが可愛い過ぎて、愛しい。


「でも時間は大丈夫?これからお仕事でしょ?」


旅館を出たのが9時半過ぎで、このまま私のマンションに送ってくれるという圭さんは午後からお仕事で今日は当直だ。


「全然問題なし。あいを送った後、そのまま出勤するから余裕で間に合うよ」


一瞬、こちらを見てにこっと笑った圭さんにはさっきの可愛らしさはもうなくて。
ドキンと鼓動が跳ねるほど、かっこいい。



圭さんの表情一つに心が奪われる私は、本当に重症すぎる。


こんなに素敵な人が私の恋人だなんて・・・本当に幸せだなって実感しながら、車を運転する圭さんの横顔にずっと見惚れていた。