美味しかった夕食を食べ終えて、私は障子の開いた窓から外の夜景に目を向けていた。


小さく光るたくさんの明かりがとても綺麗で。
現実の世界と切り離されたような、そんな錯覚に陥る。


「あい、食休みは十分できた?」


座り込んで窓の外を見ていた私の後ろから、圭さんに声を掛けられて私は振り返りながら頷いた。


「うん、大丈夫だよ」


「なら、もう一度お風呂に行こうか?その間に片づけと布団の用意をしてくれるから」


「・・・・・うん」


『布団の用意』と言われて、ドキッと弾んだ心臓を無視して、私はもう一度頷いた。




遅い時間の大浴場は誰もいなくて。
一人で広い湯船に浸かる私は、さっきから刻み続けている心音を無視できないほど、部屋に戻った後のことを意識していた。


過去に付き合った人とそういう経験だってある。
なのに、初めての高校生の女の子みたいに今から緊張している自分が情けない。


でも、やっぱり2人きりで過ごすこの後の時間を意識するなと言う方が無理な話しだ。


だって・・・隣にいる人が、本当に大好きな人なんだから。




―――…他の誰とも違う、圭さんなんだから。





私は意を決したように少し重たく感じる体でお湯から出た。



色々と考えすぎて、逆上せたかもしれない。



脱衣所の少し冷えた空気を心地よく感じながら、私は浴衣に袖を通した。