お母さんが用意してくれた臙脂(えんじ)色の浴衣を来て、大浴場を出ると、同じようにお母さんが用意してくれていた紺色の浴衣を着た圭さんが先に出て待っていてくれた。
ただ立っているだけなのに、浴衣姿の圭さんはすごく色っぽくて。
温泉で温まった私の頬の熱が、さらに上昇する。
目のやり場に困るような気がして、私は圭さんに近づくと俯き加減で声を掛けた。
「遅くなってごめんなさい」
「そんなに待ってないから大丈夫だよ。あい、温まり過ぎて逆上せちゃった?」
俯いたままの私の赤い頬の熱を確かめるように圭さんが手を添える。
たったそれだけのことなのに、私の鼓動はドクンと大きく跳ねた。
「うん・・・とっても気持ちがよくて、つい・・・」
頬が赤いのもその熱も、温泉のせいにして私は呟くように答えた。
俯く私の頭の上で圭さんがクスリと吐息を零す。
圭さんには誤魔化したことも全部、お見通しのような気がして、ますます恥ずかしくて顔を上げられない。
「・・・湯上りに浴衣姿のあいは可愛い上に色っぽくて、目のやり場に困るね」
「・・・・・え?」
私が思っていることを同じことを圭さんが口にするから、びっくりして思わず顔を上げると、目元をほんのり赤く染めた圭さんが、照れたように笑っていた。

