「で、でも圭さんお仕事は?明日はお休みじゃないよね・・・」


「明日は当直だけだから時間はたっぷりあるよ」


赤信号がいつの間にか青に変わって、圭さんがまた前を向いて車を発進させた。
フロントガラスの向こうを見つめる圭さんはにっこりと笑っている。


「お家で休まなくてホントに大丈夫?」


昨日だってずっと私についていてくれて、疲れているはずなのに。


そんな私の心配を察してか、圭さんは吐息を零すように小さく笑い声を漏らした。


「あいは心配性だなぁ。僕はキミと一緒にいるだけで癒やされるから全然平気。しかもあいと温泉でのんびり出来れば、明日の当直もばっちり頑張れるよ」


「・・・圭さん」


「・・・あいが嫌なら仕方ないけど」


圭さんが急に声のトーンを落として寂しげに呟くから、私は慌てて首を振った。


「嫌だなんて、そんなことないよ!」


「じゃあ決またりだね!」


寂しげだった声もそ、の表情もパッと明るく切り替えて、圭さんはさっき見せたにっこり笑顔で一瞬だけ私に振り向いた。


あれ?騙された??


ちらっとそう思ったけれど、圭さんの笑顔が本当に嬉しそうだったから、いつの間にか私もつられて笑顔になってOKの気持ちを込めて頷き返した。