「あいちゃんの場合は軽いし、そんなに深刻になるほどのものじゃないよ。不整脈は治る病気だしね。正しく理解してちゃんと向き合えば、何も怖いものはないから」


「はい」


「・・・あい」


ずっと黙ったまま矢野先生と私のやり取りと聞いていた圭さんに小さく名前を呼ばれて、圭さんに視線を向けると、圭さんはものすごく優しい瞳を私に向けていて。
ドキンと鼓動が跳ねた私は、なぜかとても切ない気持ちになった。


「大丈夫だよ、キミが心配することは何もないから。矢野の言う通り、不整脈は怖い病気じゃない。僕もいるから・・・大丈夫だ」


圭さんの言葉はまるで自分自身に言い聞かせているみたいで。


『大丈夫』だと、圭さんは自分に言い聞かせているみたいだと、思った。


先日まで圭さんの瞳に溢れていた不安な色は薄れている気がする。


それは病名がはっきりしたせいなのか。
怖い病気じゃなかったことに安心したからなのか・・・


圭さんの中で何かが変わった、そんな気がした。


けれど、それでもまだ圭さんの心の中には何かが隠されている気がする。
圭さんの切ないほど優しい笑顔と彼の繰り返す『大丈夫』の言葉に、私は不安が膨らむのを感じていた。