「思い出してくれたの?」
僕が確かめるように訊くとあいは小さく頷いた。
「でも・・・まだ混乱していてよくわからないの」
あいはその言葉通り不安そうな顔で瞳を揺らす。
僕はそんなあいが愛しくて堪らなくて。
彼女を安心させるように微笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ。今はまだ思い出せなくても」
そしてそっと優しく彼女の手を握る。
「だってほら。僕はこうしてキミを見つけたから。キミが僕を受け入れてくれるならもうキミを離さない」
僕はあいの手をぎゅっと握りしめて、真剣な瞳で彼女を見つめた。
「だからここからゆっくり二人で始めよう?急ぐ必要はない・・・だってこれからずっと一緒にいられるんだから」
見つめる僕の瞳をあいも涙に濡らした瞳で見つめ返す。
「・・・・・はい」
あいがゆっくり瞳を閉じて、吐息を零すように小さく頷いた。
あいの頬を涙が濡らす。
僕はその涙を繋いでいない方の指先でそっと拭った。
瞼を開いて僕を見つめるあいの瞳は涙に濡れて真っ赤だけど、もうさっきみたいに不安な色はどこにもなくて。
僕を見つめて、華が綻ぶようにふわりと笑った。
その笑顔は僕の心の中にずっと住み続けていた彼女そのもので。
愛しさが心いっぱいに溢れて僕はなぜか泣きそうになった。

